熱処理とは

 「熱処理」とは、対象物を加熱または冷却することですが、工業の世界で「熱処理」というと一般的には金属、主に鋼の熱処理を指します。
 鋼は加熱または冷却することによって、内部の性質が大きく変化するという特性を持っています。その特性を利用して、理論的に鋼を加熱や冷却をコントロールすることが「熱処理」であり、劇的にその性質を向上させることができるのです。
 熱処理は生活や産業の分野で広く活用されています。例えば包丁やナイフ、自転車のチェーンやスプロケットなどの身近なものから自動車の機関部品、ブルドーザーの爪、電車や新幹線の車輪等に適用され、その目的に応じて、耐久性や切削性、耐摩耗性などの性質を大きく向上させています。
 切削加工などの機械加工が材料の形を変化させるのに対して、熱処理は材料の内部を変化させる処理であり、目には見えませんが、モノづくりにはなくてはならない工程の一つなのです。

鋼の熱処理についての概略は次のようになります 

(1) 一般熱処理

1. 焼なまし(ヤキナマシ) 鋼を軟らかくする熱処理です。 高温から炉内で徐冷します。
2. 焼ならし(ヤキナラシ) 鋼を標準状態にする熱処理です。
鋼は硬くも軟らかくもなく適当な硬さになります。
摩耗に強く、被切削性も向上します。
高温から大気中で放冷します。
3. 焼入れ (ヤキイレ) 鋼を硬くする熱処理です。
高温から水や焼入れ油に浸漬して急冷します。
4. 焼戻し (ヤキモドシ) 焼入れした鋼には硬さが増す反面、脆くなるという欠点が発生します。
その脆さを取り除き、粘りを与える熱処理です。
その処理温度によって「低温焼戻し」と「高温焼戻し」があります。

※ 焼戻しは焼入れした鋼の性能を向上させるために欠くことのできない操作であり、各々が単独でなく、焼入れ-焼戻しで一つの操作となります。

(2)表面熱処理

1. 高周波焼入れ(コウシュウハヤキイレ) 鋼の表面を電機誘導加熱し、焼入れ硬化する熱処理です。
鋼の表面だけ電流を流し加熱し、噴水冷却をして焼入れをします。
鋼の表面が硬くなり、摩耗や疲労に対して強化されます。
2. 火炎焼入れ(カエンヤキイレ) 高周波焼入れと同じく、表面を硬くする処理です。
加熱源を電気誘導加熱→バーナー炎に置き換えた処理方法です。
3. 浸炭(シンタン)焼入れ 低炭素鋼の鋼の表面に炭素を染み込ませて、高炭素鋼とし、さらに、この鋼を焼入れして表面を硬くする熱処理です。
4. 窒化(チッカ)処理 鋼の表面に窒素を染み込ませる熱処理です。鋼に窒素が入るとそれだけで硬くなるのでその後の処理は不要となります。

熱処理に関連する作業工程

作業工程

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